久しく更新を怠っていましたが、編集部は来春の第7号発行に向けて、夏の終わりから始動しています。
ライター3人、普段はそれぞれ別のフィールドで仕事をし、こぎん刺しの取材は休みを使っての趣味的活動です。
なので、年に一度の発行というかなりスローなペースですが、無理のないよう取り組んでいます。
さて編集長・鈴木は10月上旬、山形県は河北町へ取材旅行へ出掛けました。
今年12月3~4日に「かほくKOGIN FES(こぎんフェス)」が初開催されるとの情報を入手し、次号掲載の事前リサーチというわけです。
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活動拠点の青森から山形まで、今回は高速バスを乗り継いで移動。JR山形駅前でレンタカーを調達し、30分余りで河北町に到着しました。
今回の私のお宿は、町中心部に近い「ひなの宿」。
温泉があってリーズナブルなので2度目の利用です。
お宿の名前は「おひな様」に由来するとか。町内には旧家に代々受け継がれている古いひな人形が数多く保存されているそうで、そのおひな様たちは毎年4月上旬に一斉に一般公開され、町の観光資源となっています。
町の東部を流れる最上川の流域は、江戸期ごろから紅花の栽培が盛んで「最上紅花」と称され、染料として金以上の価値があったといいます。紅花は最上川の舟運と北前船などで上方へ運ばれ、その帰り荷としてひな人形などの上方文化がもたらされました。
青森も寄港地だった北前船が、ここでも活躍していたのですね。
町内に残るかつての豪農の屋敷は大変な風格があり、莫大な富を生んだ紅花交易の繁盛ぶりを今に伝えています。
このような歴史と風土を育んだ「ひな」と「紅花」は、河北町のシンボルになっていると町役場の方が教えてくださいました。
安部家の向かいには、江戸期に紅花商として財をなした旧堀米(ほりごめ)邸があり、現在は日本で唯一の「紅花資料館」となっています。
上記写真の塀の上壁が赤味を帯びているのにお気づきでしょうか。
『紅花』(竹内淳子著、法政大学出版局発行、2004年)という本によれば、この赤味は紅殻(ベンガラ)を使っているためで、修理復元に際してかつての工法によったのだそう。
紅花の里らしい色あいの紅花資料館が、今度の「かほくKOGIN FES」の会場となります。
紅花の季節は7月ですが、町のあちらこちらに紅花のドライフラワーが飾ってあって目を楽しませてくれました。
こちらは町内で手作り味噌のショップインカフェをご夫婦で営んでいる「矢ノ目糀屋」さん。
米蔵を利用したという趣のある店内をキョロキョロしていると、こぎん刺し発見!
糀屋さんの奥さま、川端由美さんが刺したものだそうです。うれしいですね~。
(作家さんを応援する糀屋さんは、「かほくKOGIN FES」が開かれる12月4日に店内でクラフトマルシェを予定しているとのこと。開催時間は11~15時。美味なる甘酒パウンドケーキなどスイーツもあり、こちらへもぜひ立ち寄りたいですね!)
町でいちはやく、紅花染めの糸でこぎん刺しを始めた白井かおりさんの展示会が、ちょうどこの日、糀屋さんで開かれました。「かほくKOGIN FES」で作品展を予定する白井さん。ひとあし早く作品を拝見させていただき、作品づくりのこだわりなどお話を伺いました。
KOGIN FESの詳報と合わせて次号でご紹介する予定です。
ところで、紅花の新たな活用方法として「かほく紅こぎん」というブランド宣言がなされたのは令和3年(2020年)3月のことでした。
「かほく紅こぎん」とは、河北町で紅花染めをした木綿糸でをあしらったこぎん刺しを言います。すでに紅花染めの糸をこぎん刺しに用いて活動していた白井さんはじめ、町内の関係者が集まって定義付けをし、ブランド宣言が行われました。
その年の7月には、地域おこし協力隊の藏本善一(よしかず)さんが協力者の手を借りながら商品開発に取り組んだ、紅染め糸の販売がスタート。当時、青森で開かれていたこぎん刺しの体験イベントに藏本さんが現れ、「紅花で染めたこぎん糸です。使ってみてください。よろしくお願いします!」と、膝に頭がつくかと思われるほどのていねいなお辞儀をして、私にも完成品を分けてくださいました。
紅花染めとは接点のない人生を送ってきた私でしたが、ピンク色やオレンジ色などが目に鮮やかで、個人的にはとても好きな色でした。「カワイイこぎんが作れそう」とワクワクしたことを覚えています。
その紅染め糸を使った作品を全国から募り、ひとつの作品として巨大なタペストリーが生まれたのは記憶に新しいところです。今年4月に町役場でお披露目され、青森でも話題になりました。
かほく紅こぎんのブランドをさらに大きく育てたいと、河北町観光協会の主催で開かれるのが「かほくKOGIN FES」です。「岩木山こぎんタペストリー」との同時公開や、かほく紅こぎんを使った作品展、展示販売、ワークショップなど充実した内容で計画され、開催が待ち遠しいです。
これをきっかけに河北町と青森とのご縁が一層深まり、広がっていくかもしれませんね。
今回の取材はありがたいことに、藏本さんの案内で各所を訪問することができました。
河北町が元祖という名物「肉そば」を町内の食堂でご馳走になりながら、大阪出身の藏本さんが東北のこの地に至る物語をお聞きしました(内容は次号で!)。
帰り際、お土産に「かほくスリッパ」を購入しました。
河北町はなんと、スリッパの生産量が日本一!
(かほくスリッパ https://www.town.kahoku.yamagata.jp/6290.html)
お宿向かいの産直にスリッパやバブーシュが大量に並んでいました。
このスリッパに、紅こぎん糸でこぎん刺しができないかと目論んでいるところです。
以上、長々とご報告しました。
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
「かほくKOGIN FES」でお会いましょう!
(文と画像/鈴木真枝)
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大川 けい子 (土曜日, 22 10月 2022 07:21)
青森県に生まれた「こぎん」が山形県の河北町に伝わり山形のこぎんに生まれ変わっている様子がわかり、素晴らしいです。「そらとぶこぎん 7号」楽しみにしてます!