· 

石田昭子と佐藤陽子さんの映像「こぎんに手をひかれて」公開中!

 

弘前在住、編集部の石田です。先日、祖母・石田昭子が他界した際には、たくさんのあたたかいお言葉を頂戴し、ありがとうございました。

 

今日は、先日公開された祖母と佐藤陽子さんの映像「こぎんに手をひかれて」を紹介します。

 

下記から視聴できます。

 

2018年、浅草のアミューズミュージアム(現在は閉館)で開催された「津軽のこぎんと刺し子展」(津軽工房社さん主催)で上映された映像です。祖母がこぎんに出会った時のエピソードや、古作こぎんを集めた時の話が収録されています。後半では、佐藤陽子こぎん展示館を運営する陽子さんが、こぎんとの出会い、こぎんへの想いなどをお話ししています。

 

 

映像の中から、祖母の言葉を一部ご紹介します。

写真は祖母。

 

ーーーーーーーーー

「何をもって自分でも歩いたんだべなど(歩いたのだろうなと)。今でも自分ながら、よぐあさいた(よく歩いた)もんだなと思う」

ーーーーーーーーー

 

昭和30年代、古作こぎんを求め、津軽をひとり訪ね歩いた時のことです。どうしてあそこまでして探し求めたのだろうと回想しています。祖母自身、なぜ古作を探し歩いたのかわからないと言っていました。こぎん刺しに取り憑かれた、とも。それほどまでに惹かれる何かがこぎんにはあったのでしょう。

 

 

ーーーーーーーーー

「幼い頃に、母親がさ、いくさの時で何もながったはんで、足袋の底にこぎん刺しをやったのが、それ綺麗だなあと思ったのが初めです」

ーーーーーーーーー

 

祖母とこぎんとの出会いです。戦時中、物がない時代、曽祖母が足袋の底に古いこぎんを縫い付けていたそうです。こぎんの布は厚くて丈夫だったからでしょうか。三つ子の魂百まで、という言葉がありますが、このとき見たこぎん刺しの美しさが鮮明に記憶に残り、のちに祖母を収集に駆り立てたのかも知れません。

 

 

ーーーーーーーーー

「あづべでらうぢに(集めているうちに)、街のほうよりも田舎(に古作があった)。とにかく最初、目屋(西目屋村)に行ったんですよ。高屋(旧岩木町高屋地区)の人で、目屋からお嫁さんに来た人が、うちの親類の人であってあったの。それで、そこへ、そばだし(近所だし)、縁側にいであったはんで(縁側にいたので)、私、寄ったんですよ。そしたら、お嫁さんに来た時、これ私持って来たんだって、こぎん刺し見せだんですよ、昔の。それで、あぁこういうの目屋さ行けばあるんだべがと思って。それがら目屋さ行ったの」

ーーーーーーーーー

 

古作を収集するきっかけは、近所に住む親戚のおばあさんでした。旧東目屋村中畑地区(現弘前市)出身のおばあさん・石田ツナさん(明治生まれ)が、嫁入りの際に持って来たというこぎん刺しを見て、「あぁいいなぁ」「もっと見たいなぁ」と思ったのだそうです。

 

 

ーーーーーーーーー

「(津軽を)まわって歩いてるうぢに、部落(集落)によって似たり寄ったりの模様があるでしょ。別の方さ行けば、別の変わった模様があるって、気づいたのよ」

ーーーーーーーーー

 

津軽を歩くうち、地域によって模様が違っていることに気づいた祖母。それが楽しくて、次の地区、次の地区とまわって歩いたのかも知れません。

 

 

ーーーーーーーーー

「家族の反応?悪がったな。うちの主人はさ、こしたかまりすもの(こんな匂いするもの)って、匂いね。昔かまりってせばいいがさ(昔の匂いと言えばいいのか)、100年も200年も経ってるもんだもの。かもねんでおげば(放っておけば)においすっきゃ(匂いするよね)。こしたかまりすもの(こんな匂いするもの)、え(家)さおいで(置いて)って、叱られた、その頃」

ーーーーーーーーー

 

祖父・石田恒雄(大正14年生まれ)は当初、こぎん刺しに理解がありませんでした。しかし、祖母が「もう集めるの、やめる」と言った時、「せっかく集めたんだからとっておいたら」と言ったのは祖父だったそうです。のちに祖父は、祖母が刺したこぎん刺しのネクタイをよく締めるようになりました。

 

 

祖母の言葉は以上です。この他にもエピソードがあるのでぜひご覧ください。

 

 

後半の佐藤陽子さんのお話も必見です!(14:15頃〜)

写真は陽子さん。

 

 

陽子さんの「一針布藍(いっしんふらん)」という言葉が印象的でした。藍の布にひと針を入れる。それも一心不乱に。夢中になってこぎんを刺した昔の女性たちを想像しました。

 

 

陽子さんは、前田セツさんの作品に出会った時、自分でも何か素敵な作品を刺してみたいと思ってこぎんを始めたそうです。前田セツさんについては、小誌『そらとぶこぎん』第5号で特集しておりますので、ぜひご一読ください!

 

 

また、陽子さんは古作こぎんもお持ちですが、集めたきっかけは、田中忠三郎さんのコレクションにあった昔の野良着の模様を、自分でも刺してみたくなったからだとか。

 

 

小誌創刊号でも特集した高橋寛子さんとの出会いも大きかったようです。陽子さんは、寛子さんの遺品から図案を起こし、2019年に書籍『津軽こぎん刺し図案集 〜高橋寛子 天からのおくりもの〜』として出版されています。

 

 

こぎんをひとりでも多くの方に知ってほしいと、現在も活動を続けていらっしゃる陽子さんのお話、ぜひご覧ください!

 

 

下記から視聴できます。

https://youtu.be/zf9f9Rs6mmo

 

 

最後に、映像を制作し、公開してくださった津軽工房社の高橋武敏さん、引間未奈子さん、携わったスタッフの方々、素敵な映像をありがとうございました!

 

 

 

へばまだね〜*

石田