· 

【訃報】古作こぎん収集家・石田昭子さんが、5月16日に他界されました

2018年、自宅の縁側にて。自身がこぎんを刺した半纏と長スカートを身に着けて
2018年、自宅の縁側にて。自身がこぎんを刺した半纏と長スカートを身に着けて

 

 

「はぁ、こしたの目屋さ行けばあるんだなぁ、見たいなぁと思ったの」。そんな思いをきっかけに昭和30年代、津軽地方を歩いて古作こぎんを収集し、江戸・明治の女性たちの手仕事の素晴らしさを伝えてきた石田昭子さんが5月16日、天国へ旅立たれました。93歳でした。

 

編集部・石田舞子さんのおばあさまであり、昭子さん88歳の米寿のお祝いとしてご家族が企画した古作の展示会「宙(そら)とぶこぎん」から弊誌の名称を拝借させていただくなど、これまでたくさんのご縁をいただきました。「こぎんの学校」などこぎん関連イベントの際には古作こぎんを快くお貸しくださいました。そうした場面で、現代のこぎん刺しの原点である貴重な古作に触れることができた方も多かったと思います。

 

 

古いこぎんを携え、かつての収集の地であり、ダム湖の底に沈んだ西目屋村砂子瀬を訪れた昭子さん(2016年)
古いこぎんを携え、かつての収集の地であり、ダム湖に沈んだ西目屋村砂子瀬を訪れた昭子さん(2016年、舞子さん撮影)

 

 

弊誌第2号に「昭子おばあちゃん物語」として収集当時の様子を記録するため、弘前市岩木のご自宅でお話を聞かせていただきました。懐かしい思い出をたぐり寄せながら、西目屋村や弘前市東目屋地区など津軽地方の民家を一軒一軒訪ね歩いては、「古いこぎん、持ってませんか」と声を掛けて歩いたと話してくださった昭子さん。物静かで穏やかな話しぶりと、見知らぬ家を何年も訪ね歩いたという積極的な行動力の差に驚きましたが、それもこぎんの美しさ、魅力が昭子さんを衝き動かしたのだということは、石田家の古作こぎんを拝見して納得しました。

 

 

自作の総刺しジャケットと長スカート、バッグを身に着けてはにかんだ笑顔の昭子さん
自作の総刺しジャケットと長スカート、バッグを身に着けてはにかんだ笑顔の昭子さん

 

 

「こぎんがあっても、出さない人もいた。先祖の宝物だはんで、え(家)さ取っておぐっていう人もあった」。そんな資料や記録には残っていない貴重な体験談をたくさん伝え、遺してくださったことに、感謝の気持ちでいっぱいです。

 

昭和30年代、高度経済成長の波にのって農村の暮らしぶりが大きく変わり、先人の遺したこぎんの価値に気づくことなく、多くが処分されていく中で、昭子さんが多くの古作を収集してくださったことの意義を、私たちはこれから一層身にしみて感じるに違いありません。そして、これからも多くのことを学ばせていただきたいと思います。

 

 

 

 

 

晩年は視力が衰えて、こぎんを刺すことが叶わなかった昭子おばあちゃん。天国で、「昔の人にはかなわないけど…」と謙遜しながら、ニコニコしてこぎんを刺しているに違いありません。昭子おばあちゃん、たくさんのことを教えてくださり、ありがとうございました。心からご冥福をお祈りします。(編集部・小畑)

 

 

*石田舞子編著『古作こぎん刺し収集家・石田昭子の ゆめみるこぎん』

(グレイルブックス発行)
https://grail.official.ec/items/25059431 

コメントをお書きください

コメント: 2
  • #1

    kogin.net (月曜日, 17 5月 2021 17:17)

    記事にしていただきありがとうございます。おかげでとてもいい笑顔の昭子おばあちゃんに会えました。天国でこぎん刺しに励んでいる姿が目に浮かびます☺️

  • #2

    石田舞子 (火曜日, 18 5月 2021 14:20)

    祖母は天国でも刺しているかな。小畑さんが取材してくださり、津軽弁の原稿にしてくださったのが新鮮で、おばあちゃんの性格や雰囲気まで伝わってくるものでした。改めて御礼申し上げます。