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おすすめ本『津軽弘前-4 麻の糸、こぎん刺しへ』のご紹介

 

弘前在住、編集部の石田です。久しぶりの更新です!

 

先日、書籍『津軽弘前-4 麻の糸、こぎん刺しへ』(写真 八木橋廣、発行 白神書院)の紹介文を書かせていただき、令和3年4月21日付の地元紙・陸奥新報さんに掲載されました。こぎん刺し好き、青森好きの方におすすめの1冊となっており、下記に紹介文を転載いたします。

 

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津軽を生きる者の鼓動

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 この本は、写真集でありながらも、津軽塗職人の兄と、こぎんを刺す妹との物語が添えられた小説でもある。パラパラとページをめくると、写真の世界にスーッと引き込まれた。そこには、こぎん刺しが生み出されるまでの過程がありありと写し出されていた。「どんなストーリーなんだろう?」と最初のページへと戻り、読み始めたのだった。

 

 

 こぎん刺しは、模様の美しさに目を奪われるが、こぎんを刺す「布」に注目したことはあるだろうか? こぎんが生まれたとされる江戸時代から、津軽の農民たちは布を自給していた。布は何から出来ているのか? 植物である。昔の人は、大麻や苧麻(からむし)の繊維で布を織った。津軽で麻布の自給はとうに途絶えているが、物語に登場するエリという女性は、苧麻を育て、刈り取り、繊維を採って糸を績(う)み、織って刺すという昔ながらの営みを、今この時代に黙々と行っている。

 

 

 その昔、織りあがった布は藍で染められていた。「一口に藍染と言うけれど、そこにはいろんな青色があるの」とは、作中に出てくる藍染め作家・えみ子さんの言葉。彼女もまた、昔ながらの手法で藍と対話する。写真を眺めながら、藍が生む青の深遠さに酔いしれた。

 

 

 物語は、こぎんの世界に魅せられていく妹を見守る、兄の目線で綴(つづ)られていく。やがて、弘前こぎん研究所で働くことになった妹は、何を思い、刺し綴るのかーー。

 

 

 物語を読みながら見る写真は、最初の印象とまた違い、胸にじんと迫り来るものがあった。兄と妹の架空の物語でありながら、描き出されたこぎん刺しの世界は真実であり、実際にこぎんや藍染めに従事する人々が写真に収められている。膨大な手間と時間と、根気と愛情ーー。それらが美しいこぎんを生み育てることを思った。と同時に、この兄妹(きょうだい)にも会いたくなってしまった。「本質(ねっこ)を忘れないで…」という二人の思いからは、津軽を生きる者たちの鼓動が聞こえてくるかのようだ。津軽にはきっと、こんな職人が実在する。兄の物語は、前作『津軽弘前-3 漆の森、津軽塗へ』に描かれている。

 

 

 幸運にも私は、本書の撮影現場に居合わせた。作中でエリとして登場する山内えり子さんの苧麻畑にお邪魔したのだ。カメラマンの八木橋さんは、物言わず何度も、何度もシャッターを切った。「撮影中です」という緊張感は皆無で、そこにいる皆が自然だった。出来上がった写真には嘘(うそ)がなかった。美しい津軽の自然と、手仕事の風景である。

 

 

石田舞子(編集者)

 

 

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転載は以上です。陸奥新報さんにこの場を借りて御礼申し上げます。

 

 

 

山内えり子さんは、小誌『そらとぶこぎん』第2号にもご登場いただきました。「刺すのはご褒美」というえり子さんの言葉が思い出されます。こぎんを刺すまでの布づくりが、いかに大変なものなのかーー。大変さの中にあっても、えり子さんは満足そうで、そんなえり子さんの姿に癒されて帰ってきたのを覚えています。

 

 

書籍『麻の糸、こぎん刺しへ』には「ひろさき藍の風舎」の渡邉惠美子さん、弘前こぎん研究所の皆さんも写真に登場しています。現場の息遣いが感じられるようなお写真です。さらに、弘前市立博物館所蔵の古作こぎんの写真も!

 

 

ぜひお手にとってご覧ください*

 

 

書籍詳細

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『津軽弘前-4 麻の糸、こぎん刺しへ』

写真 八木橋廣、兄の文章 鹿田智嵩、妹の手紙 須藤ゆか

B5ヨコ変形判、カラー124ページ、2,200円+税

白神書院発行

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ご購入は下記にて。

 

◆白神書院さん(弘前市)のサイト

https://www.aomoritosyo.co.jp/shop/kyoudo/704/9999210305/

TEL0172-27-8811 FAX0172-27-3214

 

 

◆津軽工房社さん(弘前市)のサイト

https://tugarukoubousya.com/items/6077e58cd263f03e53eec254

TEL080-1675-3753

 

 

へばまだね〜*

石田

 

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コメント: 2
  • #1

    kogin.net (金曜日, 23 4月 2021 18:40)

    とても素敵な書評ですね!転載いただきありがとうございます。

  • #2

    石田舞子 (金曜日, 14 5月 2021 15:10)

    山端さん、ありがとうございます!
    こぎん刺しの素敵な本がまた1冊、誕生しましたね*