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日本現代工芸美術展に貴田洋子さんがこぎん作品を出展、4/24(土)まで

 

こんにちは。編集部の小畑@東京です。現代津軽こぎん刺し作家の貴田洋子さん(弘前市)から、東京・上野公園にある東京都美術館で開催中の第59回日本現代工芸美術展(4/18〜24、現代工芸美術家協会主催)に出展されているとのご案内をいただいたので、新緑が眩しい20日午後、会場で拝見してきました。

 

 

貴田さんは、弊誌第4号の「私にとってこぎんとは」でご紹介させていただきました。お話を伺った時は、埼玉県所沢市から地元弘前に戻られる直前でした。2019年12月に引っ越されて後はコロナ禍もあり、外出を控えながら、こぎんを刺し続けていることをお電話で伺っていました。昨年はこの展覧会もコロナで中止となったので、今年の出展にかける思いは大きかったことと思います。

 

 

作品を探して会場を巡ると、淡いピンク色のグラデーションが印象的な貴田さんの作品が現れました。これまで、寒色系、もしくはビビッドな色遣いが多かった貴田さんですが、今回はちょうどいま弘前で満開となっている桜を思い起こすような優しく華やかな色合い。タイトルに目をやると、「津軽・歓びの春」(160×116㌢)とありました。地元の空気を楽しんでいらっしゃる貴田さんの笑顔が浮かんできます。

 

 

「岩木山は毎日見ている」と電話でおっしゃっていましたが、稜線がとてもリアルに描かれていることも、抽象化されていたこれまでの岩木山とは大きく違う点です。ご自身が編み出された「まだら刺し」による表現も、一層詳細になっている印象。また、今回初めて、弘前市の津軽工房社さんの麻布を使ったという点でも地元に戻られたことが大きなプラスになったようで、目の前で作品を鑑賞できたことを嬉しく思いました。

 

 

私がぐっと作品に近寄って鑑賞していたところ、女性が近寄って来られました。「これは素晴らしい!え、刺し子?絵かと思った」と同行の男性に話されたので、ついつい黙っていられず、「津軽のこぎん刺しです」と説明を始めてしまいました。秋田のご出身で刺繍などもお好きとのことで、模様もじっくりご覧になりながら感心していらっしゃいました。

 

貴田さんが2007年、現代工芸美術展に初出品したのは「こぎんの表現を高めることができたら、こぎんが後世に残るかもしれない」という思いからでした。それ以来、審査を受け続けて本会員となり、現代工芸のジャンルに「津軽こぎん刺し」の存在を知らしめた方です。こうして作品を画壇に発表し続け、こぎん刺しを知ってもらう努力を続けていらっしゃることは素晴らしいことだと、改めて感じたひと時でした。

 

 

上の写真は染織の新人賞受賞作品です。この分野の表現が極めて自由、そして多彩で驚きました。コロナ禍でも、作家の皆さんが日々精進されていることが伺えます。

 

それにしても、間近に美術作品に触れられる幸せを感じた時間でもありました。作品を見ていると頭や気持ちがリセットされ、篭りがちなコロナ禍の暮らしを忘れることができました。こぎんを刺すこともそうですが、美術や工芸、アート、音楽などを通じて五感を震わすことが何とニンゲンにとって大事なことか。

 

ちなみに、美術館は入り口や出口の導線が交差しないよう制限され、展示会場もそれほど込み合っておらず、安心な空間でした。

 

☆2021年 第59回日本現代工芸美術展☆

会期:2021年4月18日(日)〜24日(土)

日時:9:30〜17:30(入場は17:00まで)

   *最終日の入場は13:00まで、13:30閉会

会場:東京都美術館(東京都台東区上野公園8-36)