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角舘徳子さんの「 こぎん刺し教室 成果展」レポート

 

 

こんにちは。編集部の小畑@東京です。角舘徳子さんが渋谷区のhaco galleryで開催している「こぎん刺し教室 成果展」を拝見してきました。本日28日(日)18時までですが、間に合う方はぜひお運びください!

 

6年前に角舘さんがご指導を始めた首都圏の教室も今は3カ所。その教室の生徒さん17人が伝統模様を活かして作られた個性的なデザイン、色遣いの小物やバッグ、帯、草履、タペストリーなどが並んでいました。

 

 

 

 

6年前に角舘さんがご指導を始めた首都圏の教室も今は3カ所。その教室の生徒さん17人が伝統模様を活かして作られた個性的なデザイン、色遣いの小物やバッグ、帯、草履、タペストリーなどが並んでいました。

 

 

 

 

 圧巻は、会場奥に展示されている角舘さんの新作「雨水」。幅127センチ、長さ180センチの大きな麻布に伝統模様を用いた“渦”と滴り落ちる水の様子が、大胆な構図でリズミカルに描かれています。繊細ながら強い芯がある、理性的な美しさを感じました。

 

 

 

 

 

会場入り口に設置された「ごあいさつにかえて」というカードに書かれたメッセージと、角舘さんから直接伺った言葉が心に沁みました。

 

「こぎん刺しを離れたくなった事があり、しばらく自分の作品を創らない時期がありました。でも、こぎん刺しの教室があったから自分自身がこぎん刺しにつなぎ止められたし、こぎん刺しの抽象的な美しさを再確認することができました。だから、教室の皆さんに恩返しがしたくて、展示会を開きました。本当に感謝しています」

 

 

 

 

 

作家として活動する中で向き合った大きな葛藤を経て、やはり布に向い針を動かし、こぎんを刺すことが自分にとって大切だと気付いたという角舘さん。迷いから開放され、優しさとともに凛とした空気をまとった表情が印象的でした。

 

その角舘さんと生徒さんたちの真摯な思いが詰まった会場は、柔らかく温かい空気に包まれていて、何だか居心地が良かったです。

 

 

 

 

また、昨日27日18時からはオンラインで「緊急座談会-コロナと工芸の未来」を開催。親交のある中津帚作家・吉田慎司さんと角舘さんによるトーク、実は私が進行をお手伝いさせていただきました。手仕事や工芸について縦横無尽に語り合うお二人のトークは示唆に富み、とっても刺激的で楽しいものでした。目撃させていただき、ラッキーでした。いつか、何かのカタチで世に出ることがあったら、ぜひお聴きいただきたいです。

 

 

 

 

*追記:新作「雨水」の糸について

 

当初、渦を巻きながら滴り落ちる線は白い糸で刺そうと考えていたのに、刺す時は化学染料を使った黒い糸を手にしていたという角舘さん。「あまり光を反射しない鈍い黒い線は、でき上がると少し不穏に見えました」と作品紹介にあります。

 

その言葉の裏には、コロナ禍でマスク越しにしか吸えない空気が綺麗な大気と混ざり合うイメージや、天から降ってくるものは必ずしも恵みや綺麗なものではないという気持ちもあったとか。制約が多いコロナ禍で、作品に対峙する角舘さんの心のゆらぎが見えるようです。